2012年09月11日

抑止力とは日本を抑え込む力のことなのか?

在日米軍が日本の再軍備を防ぎ、アジア地域の安定に貢献しているとの記事を読んだ。いわゆる「瓶の蓋」論だ。

尖閣諸島の国有化をめぐって、石原慎太郎氏といった日本国内の右側の人々の言動が勢いを増し、欧米の識者の間でも日本社会の右傾化を心配する声が出始めてきているよう。そして、それは、アメリカがアジアに軍事プレゼンスを維持しながら、うまく中国に接近するための一つの口実になってきている。

日本の政治家や外務省、防衛省が好きな「抑止力」という言葉が、この記事を読むと、日本を「抑止する力」と思えてしまうほど。

The cap-in-the-bottle theory again?

Clinton's strained swan song in China
By Peter Lee

"By forestalling a nuclear-tinged regional arms race and keeping the Japan Self-Defense Forces preoccupied with self-defense instead of power projection, the United States delivers a real and significant security and economic benefit to China, and to East Asia in general."
(アジア地域での核の軍拡競争を未然に防ぎ、日本の自衛隊を戦力展開させずに専守防衛にだけ没頭させる点で、アメリカは中国や東アジア地域に軍事的にも経済的にも多大なメリットをもたらし、貢献をしている。)

この記事のコメント欄にも
"The American military presence in East Asia has been of great value to China, not only in keeping Japan on a leash, but also in stabilizing the Koreas."
(アメリカの東アジアでの軍事プレゼンスは、中国にとって、非常に意義のあるものだ。それは日本を鎖に縛っているだけでなく、南北朝鮮をも安定させている。)

単純に、従前からの在日米軍の"抑止力"を唱え、「日米同盟、断固堅持!」を叫んでいる輩にはショックな見方であろう。国際政治の現実はそんなに甘いもんじゃない。笑顔で握手し、心の内でしたたかに戦略を考えていなくてはいけない。あの中国とインドでさえ、軍事合同訓練を再開させたばかりだ。対米追随一辺倒で、日本にはまだまだ、そうしたしたたかさが足りない。
posted by Kosuke at 01:23| Comment(7) | 在日米軍

2012年07月10日

オスプレイのオートローテーション機能は証明されていない

森本敏防衛相は9日の衆院予算委員会で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて「機体は、オートローテーション(自動回転)機能を持っている。パイロットはそのような必要な訓練を受けている」と述べた。

レックス・リボロ氏に再取材すると、

"No. Not true. Autorotation function on V-22 can only be demonstrated by flight test - without a demonstrated flight test any statement of such capability is nonsense."

「違う。それは真実ではない。V-22のオートローテーション機能は試験飛行によってのみ、証明される。証明のための試験飛行なしでは、いかに能力を持っていると証言しても、それはナンセンス(無意味)だ」。

ところで、オスプレイの安全性に関する記事を、米軍機関紙の星条旗新聞が掲載し、その後、削除されたが、グーグルのキャッシュを使って、記事を小生の英語ブログの方に再生しておいた。

Stars and Stripes deletes a story on the Osprey's safety
http://eblog.kosuke.net/article/56942638.html

この記事を書いた記者になぜ記事を削除したのかをメールで聞いてみた。

返答は
"The story was taken off line at the request of editors in the states so that I could interview more experts to get a better idea of how safe or unsafe the aircraft is. The USMC did not pressure us at all. In fact, they were very helpful answering all of our questions and providing information to us. I finished the story again this past week and it should be back online in the next few days. Thanks so much for your interest!"

「記事はエディター(編集者)のリクエストによって削除されました。専門家にさらに取材すればオスプレイがどれほど安全か、あるいは安全でないかを探れるのではないかと思いました。米海兵隊が私たちに圧力をかけたことは全くありません。実際、彼らはとても協力的で、私たちのすべての質問に答え、情報を提供してくれました。今週末、記事を再び書き終えました。向こう数日中に、掲載されるでしょう。興味をもってくれてありがとう。」

以上のような答えだったが、いったん掲載された記事を削除するのはやはり不自然だ。Jane's Defence Weeklyでも、Asia Timesでも、こういう場合は、記事を削除するのではなく、それを残したまま、updateするのが通例となっている。

さて、ここで嬉しいお知らせ。昨日、ここで紹介したCarlton Meyer氏から、オスプレイの安全性に関する拙稿について、

"Excellent report! I linked it in G2mil."「素晴らしい記事!(自分のサイトの)G2milにリンクを貼っておきました」

との返事があった。彼の軍事サイト

http://www.g2mil.com/scandal.htm

で紹介されています。手(チョキ)
posted by Kosuke at 13:41| Comment(0) | 在日米軍

2012年06月26日

ジャパンフォーカスにオスプレイの記事が掲載されました

アメリカの学術団体、The Asia-Pacific Journal: Japan Focus(通称、ジャパンフォーカス)に、オスプレイに関する拙稿が掲載されました。

Osprey Deployment a New Tinderbox on Okinawa

Kosuke TAKAHASHI

ジャパンフォーカスからの執筆依頼はだいたい次のようなパターンになっている。

アジアタイムズに僕の記事が掲載されると、コーネル大学のマーク・セルデン教授がそれを読む。そして、彼がジャパンフォーカスにもぜひ載せたい、と思ったような僕の記事が出た時に、お声がかかる。

アジアタイムズに載った記事をそのまま、ジャパンフォーカスに転載するのではなく、補足取材をして少し膨らませて、ジャパンフォーカス向けに書いている。

ボランティアの仕事であり、ジャパンフォーカスからは一切、報酬は受け取っていない。

いろいろな取材に追われる中、僕がジャパンフォーカスに寄稿しているのは、日本から海外にもっと情報を発信しなくてはいけない、との思いがあるからだ。

90年代後半、朝日新聞で記者をしていた頃、北方領土問題でも沖縄問題でも日本語だけで書いても、全然物事が動かないことを痛感した。(僕は当時、北海道沖縄開発庁長官を務めていた鈴木宗男氏の番記者を半年ぐらい務めていた。)

日本語を読める読者は世界全体でもせいぜい1億とか2億人。英語を読める人々はそれよりも一桁も多く、10億とか20億人に及ぶ。英語で書いた場合、読者の広がりが違う。影響力が違う。

そして、沖縄の基地問題でも、北方領土問題でも、英語で書いて、ワシントンの政治家や役人にダイレクトに訴えることが重要だと思っている。悔しいかな、世界は彼らによる「ワシントン政治」で大きく動かされている。(北方領土問題でも、いわゆるヤルタの密約で、アメリカがソ連の対日参戦と引き換えに、北方領土をソ連に与えることを黙認した。つまり、アメリカの責任も大きい)

いくら沖縄の問題の解決に貢献したいと思って、日本語で記事を書いても、ペンタゴンの役人たちは日本人記者が書いた日本語記事をわざわざ翻訳業者を雇って読もうとはしない。日本人自らが自らの言葉で、英語で発信するほかない。

川崎大師近くの下町で育った僕にとっても、英語で記事を書くのは決して簡単ではない。でも、以上のような思いから、英語でいつも記事を書いてきている。

僕ももう40代。もっと若い世代の日本人記者が少しでも多く「日本からアジアへ」「アジアから世界へ」の思いを持って、世界に向けて発信していってほしい。

僕の目からすると、日本はどんどん世界の中でプレゼンスが下がり、小国化している。それを補う意味でも、後に続く若い記者にも対外発信に積極的になってもらいたい。若者が内向きになっている場合ではない。
posted by Kosuke at 01:03| Comment(0) | 在日米軍