2017年09月21日

朝鮮有事の際の在韓邦人救出は大丈夫か

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先日、朝鮮半島をよく知る元日本政府高官に取材した。しかし、原稿の引用部分の確認段階で記事掲載をやめて欲しいとの申し入れがあった。

昨晩、徹夜して一気に書き上げたのだが、残念。ジャーナリスト魂を発揮し、このブログであえて、その方の名前や所属を伏せて原稿を掲載する。約6万人弱に及ぶ在韓邦人の救出は、非常に由々しき問題だからだ。その元政府高官がセンシティブになり、掲載をためらうのが分かるほどだ。

(仮見出し)
在韓邦人救出計画は果たして万全かー元政府高官が語る「在韓邦人全員の逃避は不可能」

(本文)
米朝が演出するチキンレースが緊張の度を増している。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、ワシントンやニューヨークといったアメリカ中枢部に打撃を与える核弾頭搭載の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実戦配備を急ぎ、核ミサイル実験を強行している。

これに対し、ドナルド・トランプ米大統領は19日、国連総会の演説で、「米国と同盟国が脅かされるなら、北朝鮮を完全に破壊するしかない」と述べた。北朝鮮の挑発行為が続けば軍事攻撃もあり得ると改めて警告した格好だ。

米朝が相手を強く威嚇して、緊迫した局面が続く朝鮮半島情勢。北朝鮮の度重なる弾道ミサイルの発射実験を受け、日本各地で避難訓練が矢継ぎ早に行われるようになっている。しかし、約5万7000人に及ぶ在韓の邦人救出計画はどうなっているのか。朝鮮有事が起きた際に、日米韓でどのような緊急時対応策が練られているのか。

日韓では、昨年12月に合意した日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)によって、北朝鮮に関する軍事情報を共有されることになっているが、自衛隊と韓国軍の邦人救出計画については協議が進まず、邦人退避訓練も行われていないのが実情だ。実際に朝鮮有事が起きた場合、自衛隊の輸送機は韓国に着陸することができず、米軍の力に全面的に頼らざるを得ないのか。最悪の場合、邦人が北朝鮮の捕虜になる深刻な事態になり得ないのか。

朝鮮半島情勢に詳しい元政府高官は、朝鮮有事の際に「在韓邦人6万弱を海外に逃がすことは不可能」と指摘。ソウルにいる邦人が400キロ離れた韓国南部の釜山まで自力で辿り着かなくてはいけない事態になり得ると警鐘した。9月上旬に行った同高官とのインタビューは以下の通り。

高橋:北朝鮮情勢をどうみているか。

元政府高官:たとえ話として、夏休み中の出来事をしたい。今夏、アメリカに旅行に行った。日本人の妻を持つアメリカ人男性がグランドキャニオンで車に乗せてくれて、そのまま彼の家に行った。家の中に入ると、5メートルおきにあちこちにライフル銃が置いてあった。彼は「これで身を守るんだ」と言った。そして、相手を撃つときは、必ず相手を殺すつもりで撃つのだと。なぜなら自分がやられるからだ。まさに今、アメリカの北朝鮮との関係がそうなっている。

高橋:そのたとえで言うならば、北朝鮮が攻撃してくるまでアメリカは反撃しないということか。

元政府高官:いや、そうではなく、撃つのだったら、必ず相手を殺せということ。アメリカンカウボーイは防御的にでもそうやる。そのような感じを抱いている。

高橋:なるほど。北朝鮮に対するアメリカのレッドライン(越えてはいけない一線)はどこにあるとみているか。

元政府高官:アメリカの軍事攻撃は難しい。なので、レッドラインなんて言わない方がいい。レッドラインなどもともとない。韓国の文在寅大統領がレッドラインについて、いろいろと言っているが、馬鹿なことを言うなという感じだ。「ここまでがレッドライン」と示せば、それまでいいという話になる。また、レッドラインを越えれば、韓国は攻撃するのか。韓国は北朝鮮を攻撃する気はさらさらない。トランプ大統領は、だからレッドラインについてはっきり言っていない。

 ただ、マティス国防長官が北朝鮮を攻撃するつもりがまだないとか、政権を転覆するつもりがない、などと言うのはマイナスだ。軍人というのは戦争の怖さを一番知っているから、確かに攻撃すべきではないと思っているはずだが、カウボーイがああいうことを言ってはいけない。

 トランプ大統領も「金正恩氏に敬意を払う」といったようなことを言うから、北朝鮮に足元をみられてしまっている。北朝鮮みたいな国に対しては、コンスタントに圧力をかける。ただ、あまり過激なことを言って挑発はしない。その代わり、北朝鮮が変なことをしたら、政権を倒すこともあり得るとずっと言い続けることが筋だと思っている。

 アメリカは甘く見られている。北朝鮮は今、アメリカとの交渉より、ワシントンやニューヨークに届くICBM(大陸間弾道ミサイル)を開発したという既成事実づくりに向かっている。カウボーイとアウトローの間のやるかやられるかの世界に今、入ってきていると思っている。カウボーイがどこまでやるかだ。

高橋:米朝が軍事衝突をした場合、韓国にいる約5万7000人の邦人の安否が心配される。彼らの救出計画はどのようになっているのか。

元政府高官:有事の際に在韓邦人を避難させるNEO(非戦闘員退避行動)をめぐっては、韓国が基本的に話に乗ってこない。韓国はそういう話を(日本と)したくない。例えば、アメリカ人や日本人が避難を始めたら、自分たち国民がものすごく不安がってしまう。収まらなくなる。

 だから、僕らもその話が全然できなかった。内々でいろいろと検討はしているが、表に出せる話ではない。僕も基本的にはあまりコメントをできる立場ではない。

 ただ、いくつか言えることは、その在韓邦人6万弱を逃がすことは不可能だ。なので、基本は何といっても「危ないな」という兆候があったら、なるべく「身軽にする」ということだ。

 つまり、旅行者にはなるべく韓国には行かないようにしてもらうこと。そして、在留邦人にもなるべく家族には帰国してもらうようにする。こういう話になってしまう。

 アメリカ人も韓国に20万人いる。彼らが動き出したら、とにかく邦人も退避するということだ。

 また、退避する場合には、必ずしも日本に帰国する必要はない。とにかく韓国から早く逃げること。どの飛行機でもいいから、早く飛び乗ること。

高橋:朝鮮有事には中国でもどこでもいいから、早く逃げた方が身のためにいいことは分かる。日本と違い、アメリカは年に2回ほどNEO訓練をしているが、訓練については韓国政府は認めているということか。

元政府高官:アメリカは韓国とある程度は話をしている。韓国は日本とはやりたくないということだ。別に韓国政府にとって義務はないわけだから。ただ、日本は後方支援基地になっている。その意味でも、日本は、韓国に協力をしてもらわないといけない。しかし、なかなか韓国は話には乗ってこない。

高橋:韓国側が責任をもって、釜山までは邦人を運び、そこからは自衛隊の輸送艦で日本に連れてくるとの日本メディアの報道もあったが、本当か。

元政府高官:アメリカとそのような話をしていたかもしれない。最近のことは知らない。今、どうなっているかは分からない。

 ただ、現実問題として、戦争状態になったら、ソウルの金浦空港は利用できなくなる。ソウル近郊の仁川空港も使えなくなる。なので、釜山まで行かなくてはいけないだろう。港にしても、仁川といった、北に近い港も使うのは無理。北朝鮮に近すぎる。やはり、韓国南部まで行かざるを得なくなる。しかし、400キロをどうやって南下しろというのか。

高橋:ソウルにいる邦人は自力で南下しろということか。韓国にしても有事になれば、自国の国民を救出することに忙しくて、日本人の輸送までやってくれるのか。

元政府高官:それはやってくれないだろう。結局、場合によっては自力で歩いていくことも考えないといけない。

高橋:アメリカにしても、朝鮮有事の際はまずアメリカ国民を救出する。次に、英国人やオーストラリア人、カナダ人を救出し、日本人救出は後回しになるのではないかとの憶測もあるが、どうなのか。

元政府高官:日本人はもっと上にくる。なぜなら、ピストン輸送するならば、それは日本に行くからだ。

高橋:そうすると、アメリカ人の次ぐらいに、日本人の救出が行われるのか。

元政府高官:当然そうならざるを得ない。アメリカ人を日本にピストン輸送するのに、日本人も乗せないとおかしくなる。常識論として、「日本にピストン輸送するけれども、日本人は後回しにするから、どこかに行ってくれ」といった話は到底通じない。

高橋:邦人は韓国国内にある約1万8000のシェルターに避難する計画があると国内メディアが報じているが、どうなのか。

元政府高官:北朝鮮が長射程砲で撃ち込んでくる最中は、どこにも行けない。危なくて動けない。やはりシェルターに入っていた方が安全。少し静かになったところで、移動する。これしかない。

高橋:お話を聞いていると、アメリカも日本も韓国も本当に邦人救出ができるのか、といった疑問がわいてくる。

元政府高官:アメリカはきちんとやると思う。日本側は、日本人かどうかといった仕分けをやらないといけなくなる。それは大使館の仕事になってくる。在日韓国人はどうするのか。日本企業に働いている韓国人はどうするのか。このようなことを考えると、これはそう簡単なことではない。どこまで日本が保護する対象にするのか。日本企業で働いている韓国人をまったく駄目としても、日本人が釜山まで逃げる際に彼らに助けてもらうことになるかもしれない。そのように助けてくれた人を日本はほったらかしにしていいのか。そういう訳にはいかなくなる。日本に永住権を持っている在日韓国人は、日本人と同じように対応しなくてはいけなくなる。

 また、どういう順番で救出するか。やはり子供と女性を優先することになるだろう。

posted by Kosuke at 18:22| Comment(0) | 朝鮮半島