2017年07月30日

Japan In-depth‏ に初めて寄稿しました。

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北朝鮮が2度目のICBMを発射しました。手持ちの情報を踏まえて、Japan In-depth に初寄稿しました。

トランプ政権の対北朝鮮政策、オバマ政権の「戦略的忍耐」と変わらず

友人の中国人記者は昨日、今の北朝鮮が1960年代の中国と似ていると話しておりました。確かに、当時の中国も米ソのはざまの中で、一心不乱に核ミサイル開発に邁進していた。2004年に解禁されたCIAの秘密文書では、米国は1960年代の中国の核兵器開発が、米国側の予測をはるかに上回る速度で進められ、米側を驚かせていたことが明らかになっている。

CIAの当時の報告書は中国側の核兵器にかける熱意について「現在の中国首脳は戦略核兵器の成功的な開発が自国の名声を大幅に高め、アジアでの指導的立場の獲得を強め、大国としての地位をも強化すると信じている」と記した。ジャーナリストの大先輩、古森義久さんは2004年10月25日の産経新聞の記事の中で、「中国としては、核兵器で米本土の一部やアジアの米軍拠点を攻撃できるようにしてあった方がアジアでの米軍の行動を抑止できるとの判断がある」と書いた。

上記の中国の状況は、今の北朝鮮と同じ状況でないか。現在の北朝鮮の主眼も、アメリカの軍事介入を阻止するため、ワシントンやニューヨークに攻撃可能のICBMを必死に開発している。

こんな状況だから、北朝鮮情勢をめぐる緊張は、たとえ米朝が直接交渉に乗り出しても続きそうだ。なぜなら、北には核ミサイル開発の凍結や放棄は選択肢としてあり得ないからだ。米国がいかに軍事的な圧力をかけようとも北朝鮮は屈しない。60年代の中国と一緒だ。

さらに、中国にとっては今の北朝鮮は脅威ではない。だから、中国は北朝鮮問題ではなかなか動かない。(この点については、拙稿「中国が北朝鮮に原油を送り続ける3つの理由」をご参考まで。)

ただ、中国は、韓国へのTHAADミサイル追加配備にかなり神経をとがされている。昨日、スカイプで中国のCCTVの英語放送のインタビューを受け、出演前の10分間ほど、彼らの放送を聴いていた。その間、彼らは韓国へのTHAADミサイル追加配備のニュースをずっとやっていた。THAADは北朝鮮のICBM対策には役に立たない。THAADはミサイル迎撃高度が50~150キロとされ、ICBMには届かない。米韓は北朝鮮対策と見せかけて、実際には中国に圧力をかけている。中国自身は今の北朝鮮に脅威は感じないが、このTHAADの韓国追加配備をかなり嫌がっている。自国のミサイル抑止力が弱体化されるからだ。

以下、Japan In-depth への拙稿です。掲載記事をところどころ修正、加筆しました。

後手に回るトランプ政権、対北政策は「戦略的忍耐」と変わらず

高橋浩祐(国際ジャーナリスト)

【まとめ】

・北朝鮮、ICBM「火星14」2回目の発射実験を28日夜に実施。

・今回の発射地点は前回と異なり、北朝鮮は機動性・奇襲能力を誇示。

・トランプ政権の対北朝鮮政策は「戦略的忍耐」の燃えかすのようなもの。主導権は完全に北朝鮮に。


■お手上げのトランプ政権

北朝鮮の国営メディア、朝鮮中央通信が29日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」の2回目の発射実験を28日夜に実施し、「成功した」と報じた。北朝鮮は「米本土全域が射程圏に入った」と誇示している。

軍事、外交の両面で北朝鮮に「最大限の圧力」をかけてきたトランプ政権はお手上げ状況。米国の専門家の間では、トランプ政権の対北政策が効果を上げず、トランプ大統領が強く批判してオバマ前大統領の「戦略的忍耐」と何も変わらないと批判する声も出てきている。

米国防総省(ペンタゴン)は28日、前回7月4日に発射された時とは違い、今回の北朝鮮のミサイルを初期分析段階で直ちにICBMと認定した。

2度目のICBMのこの時期の発射時期については、27日が朝鮮半島の集結から64年を迎え、「終戦記念日」となっていたことから、事前に予想されていて驚きはない。

■発射機動性や奇襲能力を誇示

しかし、今回、北が発射したのは軍需工場が集まっているとされる北朝鮮北部の慈江(チャガン)道・舞坪(ムピョン)里。ここ1週間ほど、事前の弾道ミサイル発射準備活動が報じられた、前回7月4日のICBM発射の北西部の亀城(クソン)ではなかった。北は偵察衛星で事前の準備活動をあえて見せつつ、わかりやすくサッカーで言えば、素早いフェイントをかけた。相手に察知されないミサイル発射の奇襲力や機動性を金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が見せつけた格好だ。

事実、北朝鮮メディアは「最新の実験は、我々の大陸間弾道ミサイルがいつどこからでも驚くべき方法で発射できる信頼性と能力を証明した」と誇示したうえで、「米本土全域がわれわれの射程圏内にあることが裏付けられた」と主張した。と報じた。金委員長は現地で試験発射を直接指揮したとも伝えた。

■アメリカ東海岸も射程に

北朝鮮の発表によると、今回発射された火星14も前回7月4日同様、通常より高い角度で打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射された。過去最高高度の3724.9キロまで到達、998キロを飛行して日本海に落下した。飛行時間は過去最長の47分12秒。これは多少の誤差はあるものの、米国防総省の初期分析とほぼ一致する。

前回7月4日の火星14が、最高高度2800キロ、飛行距離930キロ、飛翔時間40分だっただけに、さらに技術力をぐっと向上させた。

ICBMとは他の大陸を射程距離に収める地上発射式の弾道ミサイルのことで、その有効射程距離については、米ソの戦略兵器制限条約(SALT)をめぐる交渉で5500キロ以上と定義された。冷戦時代の米ソのICBMは約30分で約8000キロ飛行するとされた。

アメリカの「憂慮する科学者同盟」に所属する物理学者のデビッド・ライト氏は、今回発射の火星14は、通常の角度で打ち上げられ、地球の自転を考慮しないのであれば、1万400キロの射程に達するとの試算を示した。

しかしながら、地球は西から東へと右回りで自転している。このため、ミサイルは発射される方向によって自転の影響を受け、飛行距離が長くなったり、短くなったりする。


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画像:ⓒDavid Wright


上記の画像はライト氏が作成して示し、ブログ等で示したもの。左側の縦列が米国主要都市、真ん中の列が北朝鮮からの距離、右側の列が自転の影響を踏まえたミサイルの到達射程距離。

これによると、首都ワシントンを除き、右列のミサイル到達距離が、真ん中列の北朝鮮からの距離をほぼ全都市で上回っている。つまり、ロサンゼルスやデンバー、シカゴはゆうに今回のICBMの射程の範囲。ボストンやニューヨークは届くか届かないかのぎりぎりのライン。ワシントンは射程を外れている。

一方、ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は「通常軌道で飛行した場合の射程は9000〜1万キロに達する可能性がある」と分析結果を示している。

また、38ノースは、米本土を射程に収める今回のICBM発射によって「トランプ政権は、レーザー光線のごとく、急速に悪化する状況に重点的に取り組む必要性がさらに顕著になった」と指摘、「トランプ政権の北朝鮮政策への関心の無さは、明確に失敗に至った(オバマ前政権の)『戦略的忍耐』の燃えつくしのごとく見え始めている」と述べ、ミサイルの燃焼にたとえて痛烈に批判した。

また、ワシントンポスト紙のアンナ・ファイフィールド東京支局長はツイッターで、「北朝鮮の挑発の真っただ中で、トランプ政権は韓国大使をいまだ指名できていない。日本大使もまだ日本に着任していない」「それに加え、日本の防衛大臣は辞めたばかり。彼女の職は外務大臣によって兼務されているが、その外務大臣も来週、辞める予定」と皮肉っている。

金正恩氏がワシントンやニューヨークといった米東部の都市に打撃を与えることのできる核弾頭搭載のICBMの開発に邁進する一方、あたふた感が漂う米国と日本。残念ながら、主導権は完全に北朝鮮に握られているようだ。











posted by Kosuke at 10:33| Comment(0) | Japan In-depth