2014年08月30日

東京新聞の「こちら特報部」の取材を受け、コメントが紹介されました^^

こちら特報部 武器輸出 新3原則のカラクリ(上) 第1弾から抜け道 紛争当事国なし 甘い定義

2014/08/12 東京新聞朝刊 24ページ 1263文字

 四月の閣議決定で、それまでの武器輸出三原則が撤廃され、逆方向の防衛装備移転三原則が打ち出された。その第一弾が先月、国家安全保障会議(日本版NSC)で承認された。政府は「平和主義」の継承を掲げているが、この承認内容を検証すると、形骸化は明らかだ。だが、安倍首相はどこ吹く風と財界人を引き連れ、武器の「行商」に世界を歩く。景気刺激策との宣伝もあるが、実際にはその効果すら懐疑的だ。(榊原崇仁、白名正和)
 「新たな三原則は形骸化している恐れが強い。最初の武器輸出の承認例から、すでに兆しが出ている」
 英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」の東京特派員、高橋浩祐氏はそう語った。
 政府が閣議決定した防衛装備移転三原則では、紛争当事国への禁輸のほか、紛争助長を防ぐための厳格審査、第三国移転への適正管理などを定めている。承認は日本版NSCが担う。
 その第一弾として先月十七日、地対空ミサイル「PAC2」の部品(シーカージャイロ)の米国への提供と、F35戦闘機への搭載が想定されているミサイル(ミーティア)技術の日英共同研究が承認された。
 この例で明らかになったのは新原則の抜け道だ。
 実は米国は十四日の時点で、カタールと総額百十億ドルの武器売却で合意。これには日本が部品提供するPAC2も含まれている。
 高橋氏は「日本の承認前に、輸出相手国の米国が第三国移転を決めたのは大きな問題だ」と指摘する。
 新原則に従えば、日本の輸出相手国は日本の事前同意なしで第三国に転売できない。だが、今回はその手続きが取られなかった。
 ただ、これにはカラクリがあった。防衛省の担当者は「部品のライセンス元に納める際は、事前同意が不要」と説明する。PAC2の部品は米企業が製造技術などのライセンスを持つ。部品を製造する三菱重工業は米企業の求めに応じて納入することになっており、例外規定が適用された。
 防衛省側は「誓約書などで米国側の部品の管理体制を確認した。紛争を助長するなどの不適正な管理があった場合には、協力関係を見直す」と強調する。
 だが、高橋氏は「日米関係の中で、軍備や防衛の分野は特に米国の発言力が強い分野。とても日本が米国に『ダメ出し』できるとは思えない」と懐疑的だ。
 ミサイル技術の日英共同研究でも、新原則の抜け道が見え隠れする。F35自体はイスラエルが導入を予定しているが、同国は現在もパレスチナ自治区ガザでの戦闘を続けている。
 紛争当事国にみえるが、この当事国の定義は「平和を維持し、または回復するため、国連安保理がとっている措置の対象国」となっている。イスラエルはこれに該当しない。それどころか「現時点で対象国はない」(防衛省)という大甘の規定になっている。
 さらに疑問は膨らむ。高橋氏は「日本と共同研究を始めた後、相手国が紛争当事国となった際、どう対処するか。実際には、新原則を盾に研究の離脱に踏み切ることは難しい。新原則の下、どんな問題が生じ、さらに平和国家の理念を守れるか、十分検討できてないのが現状」と懸念する。



特報 武器輸出国でも平和主義? 新三原則 第1弾から抜け道 軍需振興 国イメージ変質も

2014/08/14 中日新聞朝刊 20ページ 2753文字

 武器や関連技術の海外提供を原則禁止としてきた武器輸出三原則が撤廃され、実質容認に転換する防衛装備移転三原則が四月に閣議決定された。その第一弾となるミサイル部品輸出などが七月、国家安全保障会議(日本版NSC)で承認された。政府は「平和主義」の継承を掲げているが、この承認内容を検証すると、平和の理念から逸脱しかねないという疑念がわく。景気刺激策としての期待もあるが、その効果には懐疑的な見方が多い。(榊原崇仁、白名正和)

 「新たな三原則は形骸化している恐れが強い。最初の武器輸出の承認例から、すでに兆しが出ている」
 英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」の東京特派員、高橋浩祐氏はそう語った。
 政府が閣議決定した防衛装備移転三原則では、紛争当事国への禁輸のほか、紛争助長を防ぐための厳格審査、第三国移転への適正管理などを定めている。承認は日本版NSCが担う。

 例外規定を適用
 その第一弾として七月十七日、地対空ミサイル「PAC2」の部品(シーカージャイロ)の米国への提供と、F35戦闘機への搭載が想定されているミサイル(ミーティア)技術の日英共同研究が承認された。
 この例で明らかになったのは新原則の抜け道だ。
 実は米国は七月十四日の時点で、カタールと総額百十億ドルの武器売却で合意。これには日本が部品提供するPAC2も含まれていた。
 高橋氏は「日本の承認前に、輸出相手国の米国が第三国移転を決めたのは大きな問題だ」と指摘する。
 新原則に従えば、日本の輸出相手国は日本の事前同意なしで第三国に転売できない。だが、今回はその手続きが取られなかった。
 これにはカラクリがあった。防衛省の担当者は「部品のライセンス元に納める際は、事前同意が不要」と説明する。PAC2の部品は米企業が製造技術などのライセンスを持つ。部品を製造する三菱重工業は米企業の求めに応じて納入することになっており、例外規定が適用されたというわけだ。
 防衛省側は「誓約書などで米国側の部品の管理体制を確認した。紛争を助長するなどの不適正な管理があった場合には、協力関係を見直す」と強調する。
 だが、高橋氏は「日米関係の中で、軍備や防衛の分野は特に米国の発言力が強い分野。とても日本が米国に『ダメ出し』できるとは思えない」と懐疑的だ。
 ミサイル技術の日英共同研究でも、新原則の抜け道が見え隠れする。F35自体はイスラエルが導入を予定しているが、同国は現在も、パレスチナ自治区ガザで、一時的に停戦することがあってもイスラム主義組織と戦闘状態にある。

 大甘 対象国なし
 紛争当事国にみえるが、新三原則の当事国の定義は「平和を維持し、または回復するため、国連安保理がとっている措置の対象国」となっている。イスラエルはこれに該当しない。それどころか「現時点で対象国はない」(防衛省)という大甘の規定になっている。
 さらに疑問は膨らむ。高橋氏は「日本と共同研究を始めた後、相手国が紛争当事国となった際、どう対処するか。実際には、新原則を盾に研究の離脱に踏み切ることは難しい。新原則の下、どんな問題が生じ、さらに平和国家の理念を守れるか、十分検討できてないのが現状」と懸念する。
 なし崩しの武器輸出懸念が膨らむ中、安倍晋三首相は「厳格に個別審査する」と説明するだけで、そんな懸念も「どこ吹く風」とばかりに、海外セールスの先頭を歩いている。
 閣議決定から八日後の四月九日、防衛省はインド政府と合同で次官級の作業部会を開き、水陸両用救難飛行艇「US2」の輸出を協議した。一月に安倍首相がインドを訪問した際には、三菱重工業やNECなど防衛関連四社が同行している。

 景気の「切り札」
 五月には安倍首相の欧州訪問で、英国と対生物・化学兵器用防護服の共同開発の推進などを確認し、フランスとも警戒監視用の無人潜水機などの共同開発を進める方針で一致。オーストラリアとは七月、潜水艦など兵器の共同開発を進めやすくする協定を結んだ。
 六月にパリ郊外で開かれた武器の国際展示会「ユーロサトリ」には、日本から三菱重工業など十三社が初参加し、武田良太防衛副大臣も訪問。仏リベラシオン紙は「日本は新たな武器輸出国」との見出しで、「日本は静かに武器市場にやってきた」と報じた。
 官民一体で国内の防衛関連企業を振興させるための「防衛生産・技術基盤戦略」も六月に決定。内容は防衛産業の技術基盤強化に財政投融資を投入することも検討するとしている。首相行脚といい、防衛産業には明治時代以来、官主導の体質が染みこんでいる。
 「軍と学」の協働も懸念される。五月に防衛省が輸送機の不具合の原因究明を東大大学院の教授に要請したが、大学側は軍事研究にあたるとして拒否した。
 しかし、同戦略には独立行政法人の研究機関、大学などとの連携を深め、防衛装備品にも応用可能な民生技術の積極的な活用に努めることが記されている。
 さらに防衛省は防衛産業の輸出などを一元的に担当する「防衛装備庁」を来年度にも創設する方針だ。
 安倍政権の防衛産業に対するてこ入れの根底には、防衛産業を成長戦略の一環と位置付けるだけでなく、「切り札」(官邸筋)とみなす考えがある。現に防衛生産・技術基盤戦略には「防衛産業は先端技術が牽引(けんいん)する摺(すり)合せ型の産業であり(中略)、安定的な活動は国内雇用の受け皿となるほか、地域や国全体に対して経済効果を及ぼすことが期待される」とうたわれる。

 国際競争力低め
 ただ、皮算用通りにいくかには疑問符がつく。
 「日本の製品がそう簡単に、海外で売れるとは思わない」と、軍事評論家の前田哲男氏は語る。日本の防衛産業はこれまで自衛隊向けの装備品の生産が主だった。「兵器の世界では、売れるかどうかは戦場で性能が実証される必要がある」とし、日本製品はこの点が欠けるという。
 大阪大客員准教授の久保田ゆかり氏(日米関係論)も、国内の軍需産業はこれまで国に保護されながら少ないパイを分け合ってきたという特有の事情があり、市場原理が働かず、製品の価格が海外市場より高くなっていると指摘。「日本製の素材や部品は市場で強みがあるが、製品が良くても値段は他の国の企業に太刀打ちできない。すぐに海外で一定のシェアを獲得できるとは考えにくい」
 政府は「平和主義」を掲げるが、日本製の武器が世界に広がれば、日本のイメージも変わってくる。
 前田氏は「平和国家は『ナショナルブランド』で兵器を製造できるが、国外には出さない姿勢が海外にも信用されてきた。『死の商人』のイメージが広がれば、軍需産業以外のビジネスに影響する恐れもある。武器輸出は日本経済にとっても大きなリスクに転じる可能性がある」と危惧した。
posted by Kosuke at 02:40| Comment(8) | ジャーナリズム